南極の氷河に亀裂、巨大氷山誕生か
2012年2月3日(金)15時33分配信 ナショナルジオグラフィック
南極大陸でも最も溶けるスピードが速い氷河に、巨大な亀裂が徐々に広がっている。まもなく氷河本体から切り離され、ニューヨーク市全域よりも大きな氷の塊が生まれる見通しだ。
この氷河の裂け目は長さ30キロ、幅は最大80メートルに及ぶもので、2011年10月にNASAの地球観測衛星テラが撮影した画像でその存在が確認されていた。最近になってこの画像はNASAの「今日の写真(Image of the Day)」にも採用された。
亀裂は南極西部にあるパイン島氷河の氷舌(ひょうぜつ:氷河の海岸線から舌状に突き出た部分)を横切るように進んでおり、ここで氷が割れれば、面積907平方キロという巨大氷山が誕生する。これはマンハッタン、ブルックリン、クイーンズ、スタテン島、ブロンクスという5つの行政区からなるニューヨーク市全体の面積、785平方キロをも上回るサイズだと、NASAでは解説している。
この亀裂部分が氷山として分離する時期について、NASAのジェット推進研究所(JPL)の海洋学者エリック・リグノ(Eric Rignot)氏は、「予測は非常に難しい」としながらも、「数カ月以内に起きることは間違いない」としている。
◆「海面上昇を大きく左右する」氷河
コロラド州ボルダーにあるアメリカ国立雪氷データセンター(NSIDC)で氷河の研究にあたるテッド・スカンボス(Ted Scambos)氏によると、氷河からの氷山の分離そのものは、特に変わった現象ではないという。
パイン島氷河のように海に流れ込む氷河には、海面に浮かぶ先端部が大きくなって負荷が増大し、決壊して氷山になるという通常のサイクルがあると、スカンボス氏は説明する。「ほとんどのケースでは、異常な点はない」。
しかし通常のパターンから外れた場合には、氷河の専門家たちの注目を集めることになる。今回の場合、亀裂はこれまでよりもかなり「上流」で形成されている。つまり、「氷に起きた変化を示すものだ」とスカンボス氏は述べる。
同氏によると、「亀裂の発生場所が以前よりも上流になった場合、一般的には氷河の加速という現象が認められる」という。これはつまり、氷河が海に流れ込むペースが速まったということで、さらなる海面上昇を招く。
特にパイン島氷河では、このような加速現象が懸念事項となる。というのも、南極の氷河の中でも、同氷河は「海面の上昇に最も大きな影響を及ぼしている」からだ。
実際、スカンボス氏によれば、同氷河から流れ込む氷だけで、南極が海面上昇に与える影響の4分の1ないし3分の1を担っているという。「この氷河は1年に3キロほどのペースで移動しており、しかもかなり加速が進んでいる」と、スカンボス氏は述べた。
◆「極めて重要な」氷河の決壊
海面上昇について言えば、パイン島氷河をはじめとする南極西部の氷河に起きている変化は、南極の他の地域にある氷河の変化よりもはるかに大きな意味を持つ。例えば、南極東部のメルツ氷河からは2010年初頭にルクセンブルクの国土に匹敵する大きさの氷山が分離して大きな話題となったが、これは海面上昇にはあまり影響していない。
その理由を、コロンビア大学ラモント・ドハティー地球研究所の海洋学者ダグ・マーティンソン氏は、この“ルクセンブルク”大の氷河が「常にこの場にとどまっていた」氷舌から分かれたものであったためだと説明している。
対照的に、「南極西部にはパイン島氷河のような、流れを持つ氷河が存在する。これは速いスピードで海に流れ落ちる氷だ」と、極地方の海を専門とするマーティンソン氏は説明する。パイン島氷河から氷が割れて分離した場合、その上流の山地からさらに多くの氷が流入するという。もともと陸上にあった氷が海に流れ込むことになるため、これらの氷は最終的に海水面上昇を招く。
NSIDCのスカンボス氏も、「この氷河は極めて重要だ」と注目を示している。
Richard A. Lovett for National Geographic News
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クリスマスバージョンがあったんですね。見逃してちょっと悔しいです。しかし9本も育てているとは凄い事だと思います。それだけ環境問題に真剣に取り組んでいるという事でしょうね。
巨大氷山の今後の動きも気になりますね。ナショナルジオグラフィックですから近いうちにこの記事に関する番組を放送してくれるかもしれないので是非見たいと思います。
いまウサギさんが遊びに来ていますよ^^。またお邪魔致します。