<労働審判>申し立て過去最多 不況を反映
6月7日20時3分配信 毎日新聞
雇用や賃金を巡る労働者と事業主間のトラブルの迅速解決を図る「労働審判」の09年の申立件数が、過去最多の3468件(前年比1416件増)になったことが最高裁のまとめで分かった。不況を反映し、特に東京や大阪などの大都市部で急増し、利用が伸び悩んでいるとされる地方でも利用者が増えている。一方、大半の地裁支部では申し立てができないことが課題だ。【和田武士】
昨年1年間の受理件数が100件を超えたのは▽東京(1140件)▽大阪(299件)▽名古屋(275件)▽横浜(256件)▽福岡(208件)▽さいたま(154件)▽神戸(125件)の7地裁。期間が違うものの、いずれも初年度の06年4~12月に比べ、3~7倍程度に跳ね上がった。
地方でも利用が伸び始め、06~08年は1ケタで推移していた水戸や金沢、奈良など15地裁では、09年に初めて10件を超えた。地方は労働者側の権利意識が控えめなうえ、弁護士が少なく手が回らないとの見方もあったが、日本労働弁護団副会長の徳住賢治弁護士は「労働審判の評判が大都市、中堅都市から広がっているのではないか。この1~2年でさらに増える可能性もある」との見方を示す。
しかし、地裁支部では、今年4月から申し立てを受理し始めた東京地裁立川支部と福岡地裁小倉支部以外では、取り扱われていない。山口地裁は昨年初めて受理件数が10件を超えたが、本庁から車で1時間以上かかる下関市や岩国市の支部では制度を利用できないのが実情だ。山口県内の男性弁護士は「最寄りの裁判所に申し立てられないと、敬遠しがちだ。制度の趣旨を思えば支部でもできた方がよい」と話している。
◇ことば 労働審判
賃金不払いや解雇など労働に関するトラブルを解決するため、06年4月に導入された。裁判官1人と雇用・労使関係に専門知識を持つ審判員2人の計3人が合議で解決案を示す。06~09年の平均審理期間は74.7日で、判決までに1年以上かかることが多い通常の裁判に比べ短期間で解決でき、申立人の負担を軽減できるのが特徴。
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