夏に増える金属アレルギーの原因と対処法
日経ウーマンオンライン(日経ヘルス)7月28日(水) 10時26分配信 / 国内 - 社会
治療を受けてもなかなか治らない皮膚のトラ…
今までずっと平気でつけていたネックレスなのに、最近つけるとかゆくなるようになった。ピアスを開けたら耳が腫れ上がった。そんなときは金属アレルギーを疑ってみるべきだ。
・汗で溶けた金属に体が“異物”と拒否反応
通常、人間の皮膚は金属に触れてもアレルギー反応を起こさない。ところが、汗や唾液(だえき)などで金属が溶けてできた“金属イオン“が体に入り、皮膚のたんぱく質と結合すると、それを体が“異物”とみなし、拒絶反応を起こしてしまうことがある。汗をかきやすい夏は肌の表面で金属がイオン化しやすく、金属アレルギーを発症する人が多い。
金属アレルギー研究の第一人者、中山皮膚科クリニックの中山秀夫院長は「金属アレルギーは体質などに関係なく、誰でも突然起こる可能性がある」と、説明する。
「やはりアクセサリーをつける機会の多い女性の方が発症率は高い。一番多いのは20歳前後でピアスの穴を開けたときに発症する人。歯の治療で今まで使っていなかった金属が口の中に入ったことをきっかけに発症する人も多い」(中山さん)。
どの金属にアレルギー反応を起こすかは、背中に20種くらいの金属を張って反応を観察するパッチテストで調べる。一番多いのは、身の回りで接触する機会が多いニッケル。イオン化したときの形が似ているので、ニッケルに反応する人はコバルトにも、また水銀に反応する人は金にも反応しやすいという。
「パッチテストで最初は反応が出なくても、遅れて反応が出る場合もあるので、6~7日目の反応も重要。一度発症すると金属アレルギーは一生続くが、生活の中から原因金属を取り除くことで症状はかなり軽減される」(中山さん)。
・口内の金属は一気に除去非金属素材で再治療を
症状が激しいときは、アレルギーを抑える内服薬や軟膏(なんこう)などが処方されることもある。だが、やはり治療の中心は原因金属の除去。歯科医師の村田優美さんは「口腔内の状態にもよるが、歯の治療に使われている金属の除去は一度にすべて行った方が治療の効果がわかりやすい」という。
歯科治療で使う金属はすべてアレルゲンとなる可能性があるため、原因金属を取り除いた後は、非金属素材に取り替えるのがベスト。村田さんは「今、アレルギー症状が出ていない金属でも、唾液などの作用で金属がだんだん溶け出すことによって、将来的に症状が出ることも多い。あらたに治療を受けるときの素材はセラミックやジルコニアなどの非金属にすると安全」と説明する。セラミックを使った詰め物の治療は健康保険が適用されない。1本の治療に15万~20万円ぐらいかかると考えておこう。
金属アレルギーの予防はなかなか難しいが、歯の治療に金属素材を使わない、アクセサリーはチタンなどアレルギーが出にくい金属を選ぶ、などを心がけたい。
・金属アレルギー診療の流れ
金属でアレルギーを起こしていることがわかったら、まず原因金属の種類を特定。その金属が生活のどこで使われているかを追求して除去する。
どの金属がアレルギーを起こすのかチェック
パッチテスト
背中に17~20種類ぐらいの金属を張り、2日目、3日目、7日目と3回にわたって反応を観察。最初の2日間はお風呂に入れない。ただし、大量の汗をかくと正確な結果が得られないので夏は受けられない。全国で50カ所ぐらいの医療機関が実施している。費用は2000~8000円ぐらい。
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金属が何に使われているのか追求して除去
原因金属の特定・除去
眼鏡やアクセサリー、歯の詰め物などが原因の場合は取り除くのも簡単。しかし、鍋などの調理器具や食器、毎日使う道具など、診察室に持ちこめないため、医師が直接見ることができない金属が原因の場合は、特定や除去が難しい。医師の経験や知識、コミュニケーション能力がものをいう。
・金属アレルギーの原因になるもの
指輪、アクセサリー類、
時計、眼鏡フレーム
ニッケル、クロム、コバルトなど、アクセサリーに使われている金属に触れる部分が赤く腫れたり、かゆくなったりすることが多い。金具部分にチタンやセラミックを使ったアレルギーになりにくいアクセサリーもある。
歯の詰め物
虫歯の治療に使われた金属の詰め物や歯の矯正用ワイヤなどがアレルギーの原因に。最近はほとんど使われなくなったが、水銀を含む詰め物でアレルギーを起こす人が一番多い。古い治療をした歯がある人は注意が必要。
皮革製品
皮革製品の加工工程でクロムなどの金属が使われていることがあり、敏感な人はそれに反応してアレルギーを起こしてしまう。腕時計の皮バンド、バッグのストラップなど、直接肌に触れるものには注意を。
携帯電話
最近はプラスチックの膜でコーティングするなど、メーカー各社の工夫で少なくなってきたが、耳やほおなど携帯電話機の当たる部分が炎症を起こすことがある。古くなってコーティングがはげ、地金が出ている電話は要注意。
衣類・下着
ブラジャーのホックやワイヤーなどに反応する人も少なくない。ジーンズのボタンも裏側の金属部分が直接肌に触れやすい。布製の絆創膏(ばんそうこう)でカバーするか、厚めの布地を縫いつけてしまえば安心。
その他
化粧品かぶれと間違いやすいが、ビューラーやアイライナーの口金、ファンデーション容器などの金属にアレルギーを起こす人も多い。また、ニッケルアレルギーの人は100円玉や50円玉にもできるだけ触らないように。
・こんなときは受診しよう
ピアスを開けたら化膿して治らない
今までOKだった金属がかゆい
歯の治療後に体調が悪化
歯肉が黒く変色している
→相談するなら:皮膚科へ。歯に心当たりがあるなら歯科へ。
Profile
村田優美歯科医師
六本木シンフォニー 歯科・内科
(東京都港区)
東京・六本木のクリニックで、歯科医師として、内科医と連携をとりながら金属アレルギーの治療を行っている。口腔(こうくう)インプラント学会、抗加齢医学会などに所属。
中山秀夫院長
中山皮膚科クリニック
(東京都品川区)
日本皮膚科学会認定医およびアレルギー学会認定医。東京都品川区の皮膚科クリニックで、金属のみならずダニ、香料など様々なアレルギーに関する治療を行う。
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